今 月 の こ と ば
2018年11月
友 を 求 め て
  
  親しい友を見つけるために、若いオスの象は群れから遠く離れて深い密林に入って行きました。歩いていると小さなサルと出会いました。「サルくん。君が、僕の友だちになってくれたら、嬉しいです」と言いました。するとサルは「だめ、だめ。あなたは体が大き過ぎて、僕のように木から木へと身軽に移動することができないでしょう。あなたの大きな耳は決して翼の換わりにはなりません。」と答えました。

  次に象は、2メートルもある大きなヘビに出会いました。「ねぇ、ヘビくん。僕の友だちになってもらえないかなぁ…」と言うと、ヘビは「いくらあなたの鼻が長くて僕と似ていても、僕にとっては大き過ぎてあなたの体を抱き締めることは不可能です。おまけに、草の中を這う私はきっとあなたに踏み砕かれるでしょう。あなたの友だちになるなんて無理です」と答えました。

 寂しくなった象は、自信を無くしてフラフラと歩いていると一匹のウサギを見つけました。「ねえ、ねえ、ウサギさん。僕の友だちになりたくないですか」と尋ねました。ウサギは「とんでもないことです。あなたはあまりにも大き過ぎて、私の狭い巣穴に入ることが出来ません。あなたの食べる食物の量と私が必要とする食べ物の量は全然違います。もし、あなたと一緒に暮らせば、直ぐに大飢饉の状態になるに違いありません。と言ってウサギは象の願いを断りました。

  ウサギの巣穴の直ぐ傍にとても小さな池がありました。この池に住んでいるカエルを見て「カエルくん。君こそ、僕の親しい友になってください」と象は願いました。「だめですよ。あなたはあまりにも重過ぎて、私のように飛び跳ねることはできないでしょう、おまけに、この小さな池の水を飲んだり、池に体を入ればあっと言う間にこの池の水は干上がるでしょう。あなたは大き過ぎます。さあ、さあ、あちらへ行ってちょうだい」と忙しそうにカエルは自分の小さない池を守るために答えました。

  密林のどんな動物と出会っても、若いオスの象はどの動物からも同じ答えを受けました。彼は友だちになってくれる動物がいないので群れに帰ろうと考え始めたちょうどその時、急に密林の動物たちが恐怖で逃げまわり出しました。不思議に思った象は、逃げようとしていたオカピを呼び止めてその理由を聞きました。「大変です。猛獣のトラが誰れかれかまわずに殺そうと狙っているのです。あなたも早く逃げないと…。」と話してくれました。若いオスの象は、今こそ皆の命を救うチャンスの時だと思いました。そして猛獣のトラと出会い「僕の友だちを殺さないで!」と強い口調で言いました。するとトラは「人のことに構うな!これは俺の問題だ」。トラが自分の態度を変えるつもりがないと分かって、若いオスの象は命懸けで猛獣のトラに何度も体当たりをして、とうとうトラを追い出しました。「僕がここにいる限り、もう二度とここに来るな」と象はトラに宣告しました。若いオスの象が密林の動物たち皆の命を守ったと聞いて、動物たちは彼の傍に集って来ました。そして代表の年寄りのアリクイは「あなたは私たちの友になるために、ちょうどよい重さと大きさを持っているので、皆、喜んであなたを友として迎えます。よろしく、ね!」と宣言しました。幸せでいっぱいになった若いオスの象は、いつまでも皆を守ることを約束しました。

 「知恵は自分にふさわしい人を求めて巡り歩き、道でその人たちに優しく姿を現し、深い思いやりの心で彼らと出会う」(知恵6,16)。イエス・キリストは天の栄光から離れ、この世に来られた時に友となる人を捜し求めました。しかし、人々は様々な言い訳をして「私は商売で、忙しい」「私は父が亡くなったばかりです」「あなたの教えは酷すぎて耐えられない」「あなたは悪霊に取り付かれている」などと答えてキリストの誘いを拒みました。猛獣のトラのように人々を狙っている死に打ち勝ち、全人類を守るために、イエスは命をささげました。私たちは永遠に守られているからこそ、イエスの親しい友になるのは当たり前のことではないでしょうか。キリストの愛のサイズも重さも広さも私たちにぴったりしています。

                         主任司祭 グイノ・ジェラール神父
「今月のことば」目次へ
     HOMEへ