今 月 の こ と ば |
2017年12月 |
アメリカ人のビジネスマンとメキシコ人の漁師 |
メキシコの小さな村に貧しい漁師が住んでいました。ある日、釣った大きな6匹の魚を積んで漁師の小さな船が帰ってきました。ちょうどその時、アメリカ人のビジネスマンはこの少ししか釣っていない魚を見て漁師に近づいて尋ねました。「とても立派な魚ですね。ところでこの魚を釣り上げるには、どれ位の時間がかかりましたか」と。「そんなに時間はかかりませんでした」と漁師は答えました。「どうしてもっと時間をかけて、たくさんの魚を釣り上げなかったのですか」とビジネスマンは聞きました。「家族を養うためには、6匹の魚で十分です」と漁師は答えました。 「家族のために魚を釣る以外の時間、あなたは一日何をしているのですか」とビジネスマンは漁師に尋ねました。「私は漁が終わると昼寝をします。夜には友だちと共に酒を飲みながら雑談をし、ギターの音に合わせて歌ったりします。とにかく、楽しく、楽をしてのんびりしています」とメキシコ人の漁師は答えました。直ぐにアメリカ人は次のように言いました。「私は商売と貿易の専門家です。貧しい生活を送っているあなたの助けになりましょう。私の勧めを良く聞いてください。まず漁をする時間をもっと増やすこと。次に釣って余った魚を売って、儲けたお金で漁に出るための大きな船を買ってください。その船のおかげで漁が楽になり、釣れる魚の量も多くなるので、売り上げも増えます。増えた収益金でもう一隻の新しい船を買い、二隻の船のオーナーになってください。そして、自分で魚の商売をする代わりに、仲介者を通してその人たちに商売をさせてください。 するとやがて、その利益で自分の水産加工工場を持てるようになれます。そうすれば、あなたはこの貧しい村から出て、もっと豊かで便利な町に住めるようになるでしょう。そしてその町から、オーナーとして仕事の管理をすることができます。 「そうなるまでに、どれ位かかるのでしょうか」とメキシコ人の漁師は尋ねました。「多分15年から20年位です。しかしその頃には仕事がとても面白くなり、あなたの水産加工工場の会社を株式市場に上場するなら、あなたはお金持ちになれます」とビジネスマンは答えました。「そうですか、しかしその後はどうなるでしょう」と漁師は尋ねました。「その後、退職してから、小さな村で暮らすことができるでしょう。そこでのんびりしたり、数匹の魚を釣ったり、昼寝をしたり、友だちとお酒を飲みながら雑談をしたり、ギターの音に合わせて歌ったりできるでしょう」とアメリカ人が答えました。「そうですか。私はすでにその生活を、今、送っています。15年も20年も待つ必要はありません」と言って、漁師はアメリカ人のビジネスマンに背中を向けて自分の質素な家に入って行きました。 「人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか」(参照:マルコ 8,36)とイエスは忠告しました。幸せは豊かさと富の内には見つけられません。贅沢な暮らしは必ず不安やストレス、人の妬みを引き起こします。幸せは小さな出来事や単純な生き方、家族的な雰囲気、また友だちとの出会いの中に満ち溢れているものです。幸せになるために詩篇131編の言葉を自分の人生の土台にしましょう。「神よ、わたしは、おごらず、高ぶらず、偉大なこと、身にあまることを求めようとしない。心静かにわたしは憩う。」(参照:教会の祈り 第1土曜日読書) 主任司祭 グイノ・ジェラール神父 |
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