今 月 の こ と ば
2017年02月
ゆで卵のゲーム
 真夏のある日、小学校3年生の担任の先生がクラスの子供たちに一つのゲームをさせることにしました。先生は子供たちに、銘々ビニール袋に茹でて殻をむいた卵を入れて持って来るようにと言いました。「ビニール袋に入れるゆで卵の数は、君たちが嫌っている人と意地悪をする人の数を入れなさい。そして、その人たちの名前を紙に書いて一緒にビニール袋に入れてください」と先生は説明しました。

 さて、ゲームを始める日に子供たちは言われたように正直に嫌いな人と意地悪をする人の名前を書いた紙と人数分のゆで卵を持って来ました。ある子供は2個、中には3個あるいは5個持って来た子供もいました。先生は「今から皆はゆで卵の入ったビニール袋を自分のランドセルに入れて、1週間の間ずっとどこへ行く時にも持ち歩きなさい。絶対にランドセルから出してはいけません」と言いました。

 日が経つにつれて、腐ったゆで卵から悪臭が出るので、子供たちは文句を言い始めました。なんと5個のゆで卵を持って来た子供たちは、より一層悪臭の強い袋を持ち歩かなければなりません。強い悪臭を耐え忍ぶことができない子供たちは、先生との約束を破って1週間にならないのに、ビニール袋のゆで卵を捨ててしまいました。それを知った先生は、ゆで卵のゲームを早めに終わらせる決心をしました。「君たちは、まだ1週間にもならないのに、ゆで卵を持ち歩くことができませんでした。どうしてだと思いますか」と子供たちに尋ねました。子供たちは口々に不平を言い、悪臭のするゆで卵をあちらこちらに持ち歩かなければならないことで体験した苦労について、文句や不満、恥ずかしさや強い悔しさ、不快感などの苦痛を訴え始めました。

 そこで先生はこのゲームに隠れている意味を皆に話しました。「君たちがこのゲームで悪臭のする卵を運んだことは、まさに君たちが誰かに対して心の中にいだいている憎しみや意地悪な態度と同じです。憎しみから出る悪臭が君たちの心を汚し、君たちはその心をあちらこちらに運んで行くことになります。たった1週間でさえ、腐ったゆで卵の臭いに我慢できないのに、これからずっと一生の間、君たちの心に悪臭を持ち続けるとしたら、どんなことになるでしょうか。よく考えてごらんなさい」。

 「敵を愛しなさい。あなたがたを憎む者に親切にしなさい。悪口を言う者に祝福を祈り、あなたがたを侮辱する者のために祈りなさい」(ルカ6,27-28)とイエスは勧めました。一生涯、重荷を背負わないようにするために、人に対するどのような憎しみも、私たちの心から投げ捨てましょう。私たちの取るべき最良の態度は、他の人を赦すことです。なぜなら、他者を否定することは、心の平和を遠ざけることになるからです。他の人の良いところに心を留め、憎しみの心を捨て去りましょう。なぜなら、それは神のように憐れみ深い人となるためです。

                         主任司祭 グイノ・ジェラール神父
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