今 月 の こ と ば
2016年03月
先生と学生の討論 

  神の存在を否定して、それを学生たちに納得させたい無神論者の先生は「神がすべてを創ったと考えるなら、彼は悪の責任者だと認めなければなりません。 なぜなら、創られたものはそれを創った人の個性を現すからです。 従って、神が存在するのであれば、その神は悪い神だということになります。」と、自慢げに断言しました。 するとすぐにある学生が尋ねました。 「先生、質問をしてもよろしいですか。 寒さ存在しますか?」 「勿論、寒さは存在します。 おかしなことを聞くね。 だって君は、冬になると暖かい服を着るでしょう…?」と先生が答えました。 「いいえ、先生、寒さは存在しません。 物理学の教えによると、私たちが『寒さ』と呼ぶものは、ただ暑さが欠如しているだけです。 すべての人と物はエネルギーを生み出し、それを伝えます。 それは『暑さ』と呼ばれています。 絶対零度(−273.15℃)(注1)は、完全な暑さの欠如を示します。 この温度では、すべての物質は反応を示さないからです。 ですから、『寒さ』は存在しません。 暑さの欠如を示すために、人間がこの言葉を作り出しただけです。」そう言って、学生は先生に続けて次の質問をしました。

 「先生、暗闇は存在しますか。」「はい、勿論、暗闇は存在します。 また変な質問をするね。」と先生が言いました。 「先生、残念ですが、暗闇は存在しません。 暗闇は光が欠如しているだけです。 私たちは、光を研究することができます。 たとえば、ニュートンはプリズムを使って光で様々な色の光線を作り、光の波長を測りました。 また、光の波動を研究することもできます。 ろうそくの小さな光でも簡単に暗闇を覆い、暗闇を照らすことができ、その光が満たす空間を測ることはできます。 しかし今まで暗闇が満たす空間を測ることや分析する人は誰もいませんでした。 暗闇を測ることはできないからです。 なぜなら、暗闇は光が欠如していることを示すために、人間がこの言葉を作りだしたのです。 ところで先生、悪は存在しますか?」

 自信を失った先生は、学生に次のように答えました。 「先ほど申し上げたように、悪は存在します。 どこへ行っても、すぐ見つけるのです。 自分の周りを考えただけでも、溢れる殺意、万引き、偽証、暴力の事実など、はっきりと悪を証ししています。」それに対して、学生は言いました。 「先生は、また間違えられましたね。 悪は存在しません。 悪とは簡単に言えば、神の不在の結果です。 寒さと暗闇について説明したように、神の不在を示すために人間が『悪』という言葉を作りました。 神は『悪』を創造しませんでした。 人は自分の心のうちに神の愛、神の愛の温かさ、神の言葉の光、神への信仰の力を抱いていないときに、人は始めて悪を感じるのです。 ちょうど、暑さがないときに人は寒さを感じ、また光がないときに暗闇がすべてを包むように。 神を信じない人は、必ず悪を信じるようになります。」この結論を聞いて無心論者の先生は「あなたの名前を教えてください。」と願いました。 すると、その学生は「私は、アルベルト・アインシュタインです。」と答えました。

 四旬節の間に神についての私たちの間違った考えを正すように努力したいと思います。 聖書の言葉を味わうことにより、ミサ祭儀に真心から参加することにより、疑いの暗闇を追い払い、信仰の光を受け、暖かい心で神の現存を深く味わいましょう。 いつくしみの特別聖年の恵みが皆様に神との揺るぎない交わりを豊かに実現しますように。

(注1)絶対零度:温度を低下させていくと、理論上、分子や原子の運動が完全に停止する状態ができます。 その温度を絶対零度といいます。
摂氏マイナス273.15℃、華氏マイナス459.67oF

                         主任司祭 グイノ・ジェラール神父
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