今 月 の こ と ば
2015年9月
 金のくさりと象牙の櫛(オー・ヘンリーの作品より)

 
   山のふもとに暮らしていた二人の夫婦は結婚した日から尽きることのない愛で愛し続けてきました。苦労の多い乏しい生活を送りながら二人は心に大きな希望をそれぞれに抱いていました。というのは夫が貴重な金の懐中時計を持っていましたが、その鎖は普通の紐でした。貧しさのせいで金の鎖を買うことが出来ませんでした。妻は長く美しい髪を持っていて、それを飾るための象牙の櫛がほしいと思っていましたが、それを買うお金がありませんでした。二人は夕食のときなどに、お互いののぞみについて語り合いました。しかし長い年月の間に夫は金の鎖のことをだんだん諦めていきました。同時に妻も象牙の櫛のことを忘れていきました。結局二人はそのことについてもう話すこともなくなりました。

   ところで彼らの結婚25周年の朝、夫は自分の妻が長く美しい髪を突然に切ってしまったのを見て大変驚きました。「一体あなたは何をしたのか」と夫は叫びました。何も言わないで妻は手を開いて、夫の懐中時計にあう輝く金の鎖を彼に見せました。「あなたが昔から欲しがっていた金の鎖を今日の記念日にあなたにプレゼントするために、私は自分の髪を切って売りました」と妻は言いました。それを聞いて夫は「ああ何ということだ!私もあなたが昔から欲しがっていた象牙の櫛を今日の記念のプレゼントとして、あなたに贈るためにわたしの金の時計を売ってしまいました。」 全く役に立たないプレゼントを見て、二人は泣きながら抱き合いました。そして相手に対する深い愛を神に感謝しました。

   私たちのために死ぬことによって、イエスは御自分の愛を表しました。私たちが永遠に生きるためにイエスは自分の命を捨てました。「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」(ヨハネ15,13)からです。私たちは愛に生きるために何を捨てるでしょうか。他の人の幸せのために、はたして私たちは自分にとって一番大切なものを捨てる覚悟があるでしょうか。それがなければ愛の完成にたどり着くことはとても無理です。


                         主任司祭 グイノ・ジェラール神父
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