今 月 の こ と ば
2015年6月
三つのたとえ話

  @マハラジャのハサミ 

 インドのマハラジャは、どうしてもとても有名で賢い人、思慮深い人に出会いたいと思い、長い旅を続けて、やっとその人の前に立つことができました。マハラジャはその有名な賢い人の前にひれ伏して、美しくとても値打ちのあるたくさんのダイヤモンドを嵌め込んだ純金のハサミを、彼にプレゼントしました。思慮深い人はこのハサミを手に取り、よく見てから彼に返しました。「素敵なプレゼントを有難うございます。しかしこの高価なハサミを私は使いません。その代わりに普通の一本の針をいただく方が幸せに存じます」と思慮深い人が言いました。マハラジャはビックリして「全く私にはあなたのおっしゃる事が理解できません。もし一本の針があなたに必要なら、当然、一丁のハサミも必要でしょう」と、問い返しました。「いいえ、マハラジャ様。ハサミは物を切ったり、あるいは物を切り離したりします。しかし、針を使えば、私は簡単に破れた物や引き離された物を繕って縫い直すことができます。実は私は、つまらない口喧嘩のせいで離婚したり、別居したりした人々に、毎日、愛と仲直り、交わりと一致について教えています。ですから、あっと言う間に物を切り落とす高価なハサミよりも、私は時間をかけて物を縫い直し、一致させる一本の普通の針が欲しいのです。ぜひ、それを私にください」と、思慮深い人がマハラジャに答えました。

 あなたは人々を傷つけ、分裂させ、追い出す人々の味方ですか、それとも人々の過ちを赦し、人々を慰め、仲直りさせる人々の味方ですか。


  A相応しい十字架

 寂しそうな人が毎日神に苦情を言い続けていました。「神様、あなたが私にくださった人生の十字架は重過ぎて、私には全く合いません。私に与えてくださったこの十字架は、他の人のために作られたものだと思います」と。長い間知らん顔をして沈黙を続けていた神は、ある日、次のように彼に答えました。「わかった、わかった。それなら、あなたに救いの手を差し伸べましょう。今、あなたの前にたくさんの十字架を置きますので、自分の好みに合う好きな十字架を自由に選んでもいいですよ」と。そして、突然この人の目の前にさまざまな大きさと重さの違う数えきれないほどの十字架が現れました。嬉しくなったこの人は、直ぐに自分が生まれた時から持っていた十字架を捨て、自分にぴったり合う十字架を捜し始めました。最初の十字架はとても軽い十字架でしたが、何度も試していると自分の肩に傷が付きました。二つ目の十字架は、最初のものと同じ重さでしたが、長過ぎて歩きづらいでした。三つ目の十字架は、非常に小さい十字架ですが、ザラザラしていたので掴むことすら至難の業でした。この人が見つけた木の十字架も、鉄の十字架もなかなか自分に合いませんでした。しかし諦めずに捜し続けた忍耐のお蔭で、ようやくこの人は自分に合い、運び易い十字架を見つけました。非常に喜んだこの人は神に向かって「ご覧ください、神様。やっと見つけました。これこそ私に合う十字架です」と大きな声で叫びました。「本当にそれでいいですか。あなたの選んだ十字架はあなたにピッタリで正しい選びです。しかし、これは二人だけの内緒の話ですが、今あなたが苦労して選んだその十字架は、あなたが私に苦情を言い続けていた時に背負っていた十字架ですよ」と神は笑いながら答えました。

 神に文句や苦情を持ち込む前に「神は人を耐えられない試練に遭わせることはなさらず、むしろ、耐えることができるように、試練と共に抜け出る道をも用意してくださる」(参照:1コリント10・13)ことを忘れないようにしましょう。


  B結び目

 パリ外国宣教会の年寄りの神父は、ある人に次のように教えました。「全ての人は、一本の糸によって神と繋がっています。人は罪を犯す時、この糸が切られています。しかし、人が真心から自分の過ちを悔い改めて、そして赦しの秘跡を受けるなら、神はその糸に結び目を作ることになります。勿論、この糸は短くなりますが、それと同時に人は神により近くなるのです。従って、罪から罪の悔い改めへ、罪の赦しから結び目へとだんだん進むにつれて、人はますます神に近い者になります。もしあなたが早めに神に辿り着くことを望むなら、犯した全ての過ちを心から悔い改めなさい。そして何よりもまず、赦しの秘跡を度々受けなさい」と。

 この賢明な勧めを聞いて、あなたはどのように行動しますか。








                           主任司祭 グイノ・ジェラール神父
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