今 月 の こ と ば
2015年5月
四本のローソク

                                
 ほの暗い教会の中で、一人の子供が祈っていました。祭壇の上には、ゆっくりと燃え尽きていく四本のローソクが置かれています。教会の静けさの中で、ローソクたちが小声でささや合っています。子供は耳をすましてローソクたちの話しを聞きました。

 最初のローソクは不満を漏らして次のように言いました。「私は平和の光です。でも人々は本当に私を望んでいるわけではありません。世界中のあらゆるところで、戦争、暴力、テロ行為、殺意などが溢れています。私は自分の光を無駄に灯してきたのではないかと思います。もう限界です。そうです、私はもう消えるほうがよいのです」。そう言って、平和の光のローソクの灯は弱くなり、その炎は消えてしまいました。

 二番目のローソクも苦情を言いました。「私は信仰の光です。けれども皆は、何についても信じるために証拠を要求します。真理のよりどころを探すことにはほど遠く、人々は占いの嘘や偽りの予言や迷信のうちにむなしく幸福を探し求めています。そして、信じるために人々は、はっきりした証拠を要求します。私はここではまったく役に立たちません。実際、私のきらめきはどんどん弱っていくのを感じています」。するとその時、微かな風が吹いたので、信仰の光のローソクの灯は弱くなり、その炎は消えてしまいました。
                         
 三番目のローソクが続いて言いました。「私は愛の光です。しかし人々は私の大切さを全く理解しません。彼らは一瞬に過ぎない短い楽しみと私を混同してしまっています。私は永遠に生き続けるものなのに…。もう燃え続ける力はありません…」。そう言うと愛の光のローソクの灯は弱くなり、その炎は消えてしまいました。

 ローソクたちの話を聞き終わったちょうどその時、子供はすっくと立ち上がって、消えた三本のローソクに近寄り、怒って叫びました。「どうして消えちゃったの…。ずっと灯っているはずじゃなかったの…」と。そして、子供は泣きだしました。そこで、まだ灯っている最後のローソクが子供に言いました。「坊や、泣かないで、私は希望の光です。私の炎が灯っている限り、あなたは他の三本のローソクを、また灯すことができるのです」と。涙でぬれた顔で子供は言われたように、希望のローソクを手に持って、炎の消えた三本のローソクに火を灯しました。涙をぬぐってから、子供は四本のローソクたちに厳しい口調で言いました。「もう二度と消えないで…。君たちなしに未来はないのだから。生きる意味もなく、幸せにもなれないのだから…」と。四本のローソクたちは、灯り続けることを約束しました。その約束を聞いた子供はとても喜んで教会を後にしました。

 人生の試練や思いがけない出来事にもかかわらず、あなたの希望の炎が消えることのないように。あなたが生きる限り、この子供のように、この世に平和、信仰、愛の光をもたらす人になりなさい。闇を憎むよりも一本のローソクを灯す方が素晴らしいのです。灯っていないローソクは、決して他のローソクに火を灯すことが出できません。しかし、灯っているたった一本のローソクがあれば、他のたくさんのローソクの火を灯せることを忘れないでください。逆境や、人々の無理解、無関心を深く悲しまず、あなたの心の奥底に希望の錨を降ろしましょう。そして、どんな試練があなたを襲っても、歩き続けることを恐れないでください。あなたを立ち止まらせて、風があなたの希望の炎を消してしまうことだけを恐れましょう。さらに、あらゆる面で、あなたの人生は光り輝くものとなるように、平和、信仰、愛と希  望の泉である神の近くに留まって、決して離れないようにしましょう。

                           主任司祭 グイノ・ジェラール神父
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