今 月 の こ と ば
2013年1月
信じる理由があるでしょうか?

  アスクレピオスの杖   蛇は足を持たない長い体や毒を持っていること、脱皮をすることなどから「死と再生」を連想させ、長い間餌を食べなくても生きている生命力などにより、古来より「神の使い」などとして各地でヘビを崇める風習が発生しました。 最近でも蛇の抜け殻を「お金が貯まる」として財布に入れる風習もあります。 また、漢方医学や民間療法の薬としてもよく使われています。日本では白蛇は幸運の象徴です。

  蛇は古来、世界的にも信仰の対象です。 各地の原始信仰では、蛇は大地母神の象徴として多く結びつけられています。 ネズミなどの害獣を獲物とし、また脱皮を行う蛇は、豊穣と多産と永遠の生命力の象徴でもあります。 また古代から中世にかけては、尾をくわえた蛇のデザインが「終わりがない」ことの概念を象徴的に表すとされました。

  ギリシャ神話においても蛇は生命力の象徴です。 杖に1匹の蛇の巻きついたモチーフは「アスクレピオスの杖」と呼ばれ、医学の象徴として世界的に用いられています。 また、杯に1匹の蛇の巻きついたモチーフは「ヒュギエイアの杯」と呼ばれ、薬学の象徴とされています。 ヘルメスの神が持つ2匹の蛇が巻きついた杖「ケリュケイオン」は商業や交通などの象徴です。 「アスクレピオスの杖」と「ヘルメスの杖」は別のものですが、この二つが混同されている例もあります。

  ユダヤ教やそこから発展したキリスト教、イスラム教では蛇は悪魔の化身、あるいは悪魔そのものとされました 。聖書の話の中には蛇がよく出てきます(創世記3章、出エジプト7章、民数記21章、列王記下18章、マルコ16章18節、ルカ10章19節、黙示録12章など)。 聖書の蛇は、命と死、知恵と混乱、性と豊かさを現し、度々、メソポタミアの地下の世界の神々と関連されています。 その上、「生きた神」と呼ばれるエジプトのファラオの頭の飾りにされている蛇は、彼の権能と支配を表現しています。 そのためイスラエル人にとって蛇は、憎むべき敵の象徴であり、同時に偶像礼拝のシンボルでもあります。

  古代エジプト人は 死者を地下の世界の危険な力から守るために、動物の形をしている小さなレプリカを死者の体のそばに置く習慣がありました。 このレプリカのお陰で「死の脅威」を必ず「安全と救い」に変化出来ると思われていたからです。 古代エジプトのファラオはその象徴を冠として頭に嵌(は)めていました。 そう言う訳で、その迷信を利用して エジプトの影響を受けたヘブライ人から 毒蛇を遠ざけるために、モーセは青銅の蛇を目立つ旗印としました。 それを見た人は、蛇にかまれても死ななかったそうです(参照:民数記21,9)。 実際そのことは、神ご自身が自分の民を守られたことに他なりません。
ケリュケイオン

 キリスト者は、救いは決してお守りや魔除や人間が作ったものなどから来ないと固く信じながら、ただひたすら「死に打ち勝って、復活されたイエス」をしっかりと見つめて、キリストの内に永遠の命の希望を置くのです。 蛇の年(巳年)のこの1年、私たちがそれを世界の人々に伝える使命と責任を持っています。 特に、信仰年に当たって一緒に、誇りを持ってその務めを実践しましょう。

新年おめでとうございます。


                              主任司祭 グイノ ・ ジェラール神父
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