今 月 の こ と ば
2012年1月
2012年は日本では龍の年と定められている。

  旧約と新約聖書をはじめ、中世とルネサンスの時代のヨーロッパの芸術家は龍(ドラゴン)を、聖ジョルジオの物語を通して、悪や地獄の力やサタン自身の象徴としてしまった。 しかし、世界中の古代神話が 龍の良い面について述べている。特に龍が泉を湧き出させ、豊作をもたらし、大自然をうるおし、豊かにする。 龍はまた王や支配者の権能と権威を表し、命の力と人生のリズムのシンボルである。

 さて、龍はもともと世界各地に様々な形で存在していたが、日本の龍は、中国から伝えられたものである。 中国の後漢(2世紀)の時代には、龍の体の、角は鹿、頭はらくだ、眼は鬼、耳は牛、身体は蛇、腹はカニ、うろこは魚、爪は鷹、手のひらは虎からきているという説が唱えられた。 また口の辺に長髯をたくわえ、のど下には一尺四方の逆うろこがあり、あごの下に宝珠を持っていると言われる。秋になると水の淵の中に潜み、春には天に昇るとも言う。 龍の口から敵を焼き尽くす火が出て、また 龍のなき声によって雷雲や嵐を呼び、更に竜はたつ巻となって天空に昇り自在に飛翔すると言われる。

 国々の伝説によれば 龍は 宝物の番人であり、アジアでは高価な真珠、中東アジアでは金の羊毛、東ヨーロッパでは金と宝石の山、西ヨーロッパでは美しいお姫様を見張って、敵から命に賭けて守る。

  中国では龍の姿は、帝王を象徴するものとされ、その姿は、宮殿、玉座、衣服、器物などに描かれた。 こうした中国の龍は、日本へ入ってきて、蛇を主体にいろいろな動物などと融合し、空中、陸上、水中で自由に活動することができる水の神として、龍神や海神として崇められるようになる。 

 そこで、私は 勝手に この龍をキリスト者の象徴とする。 水から生まれ、地上に住み、天まで昇る龍は 確かに、洗礼の水の中で神の子となり、光の子として地上の住み、そして生涯が終わると天の国に昇り、入るキスト者の反映だと私は思う。 丁度、龍が雨をあやつり大地を潤す、豊穰のシンボルとして認められている。 

 同ように、キリスト者も 信仰活動と祈りによって世界の畑に豊かな恵みの雨をもたらす。 燃える聖霊の力を受けているキリスト者は 熱心に自分の口から罪と悪魔を焼き尽くす神の火の言葉を宣言し、また、皆の幸せのために、福音の言葉の熱意を吹き出す。キリスト者の叫びは 祝福の嵐と憐れみや慈しみや赦しのよい雲を全ての人々の上に呼び起こす。更に キリスト者は 神の子羊であるキリストの栄光の衣を身に着けて、福音が述べている高価な真珠(マタイ13,45-46)や畑に隠れている宝(マタイ13,44)である信仰を、更に昔のお姫様の美しさを越えている自分の魂の清さを命に賭けて守る。 信仰の宝物は金銀をはるかに越え、永遠の命の保証だから。

 龍の年に当たって、私たちが皆 良いドラゴンになって、神と人々の前で 豊かさと幸せの泉の人生を送るように、切に主に願い、祈っている。

                                主任司祭 グイノ ・ ジェラール神父

「今月のことば」目次へ
     HOMEへ